「わが人生に悔いなし」の色紙を見て考えたこと。

伊豆の暮らし

もう数年前になりますが、在職中に限らず退職されてからも大変お世話になった、元上司の告別式に参列しました。祭壇の前には彼の自筆の「わが人生に悔いなし」という色紙が画架に飾られていました。それは、以前老人施設に入っておられた彼を何度か尋ねた時、彼の部屋に飾ったあったものです。彼は、日系大手食品・飲料メーカーのブラジルとメキシコの新規事業発展に多大な貢献をされた方です。あらゆる苦難を乗り越えて来られたことを、間近に見てよく知っていました。「わが人生に悔いなし」は、彼にふさわしい遺言だと思いました。

最近、あるところで、現役を退かれて悠々自適の生活をされている雰囲気を持たれた方々の会話を、耳にすることがありました。お互いに気のおけない仲間の集まりの様子でした。そこに、お酒が少し入ったせいでしょうか、「俺の会社人生は悔いが無い」とか「いい人生だった。思い残すことはない」など、口々に話され、お互いがうなづかれていました。最後は皆さんで「わが人生に悔いなし」と唱和され盛り上がっていました。

自分のこれまでの人生を振り返りますと、「わが人生に悔いなし」とはなかなか言えません。しかし、「やりたいこと、好きなことはやらせてもらった」という満足感はあります。先日、妻との会話の中で、妻に感謝の気持ちで「お陰様で満足のいく人生を送らせてもらいました」「ありがとうございました」、と言ったところ、妻の「あなたは、やりたいことを好きなようにやってこられた人生ですから、満足されたでしょう」という一言に「ドキッ」としました。

自分は、今まで自分のことしか考えいませんでした。「妻の人生」「子供たちの気持ち」を真剣に考えてこなかったのです。私の意志で、海外勤務を繰り返しました。それに一言の不満も言わずについてきてくれた家族。自分が頑張っていれば、家族は満足してくれているものだと思っていました。自分の仕事では、悔いが残ることはありましたが、後悔することはありませんでした。「妻には、やりたいことがあったのではないか」。そんな私の戸惑いに、「私も子供たちも十分幸せでしたよ」と言ってくれた妻の言葉に救われました。

皆さん、「わが人生に悔いなし」と叫ぶ前に、胸に手を当てて考えられてはいかがでしょうか。

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