100歳になったとき「今日で包丁を置きます」と宣言して、自ら施設に入った義姉のお母様の見事な引き際。ふとわが身を振り返ると、結婚57年毎日三度の食事を作ってくれる妻の姿が。主婦の家事労働の大変さと夫側の意識改革を綴った感動エッセイ
先日、久しぶりに実家の義姉に電話をして、家族のみんなの近況を伺いびっくりしたことがあります。以前に、義姉のお母様は90歳を過ぎても元気で、畑仕事はもちろん、炊事から身の回りのことはすべて自分でこなしていることを聞いていました。しかし、さすがに100歳近くになったら、施設に入っておられるだろうと勝手に想像していました。ところが、義姉の話はこうでした。100歳まで元気に何でもこなしていた義姉のお母さんが、ある日突然「もう明日からは料理をしない。料理を作るのが疲れた。料理を作る元気がなくなった。明日から包丁を置く」と宣言したそうです。
そしてその通り、翌日からは料理を作らず、施設に入る準備をして、さっさと施設に入ったそうです。そして施設に入られてから、今では103歳。その町の高齢者だそうです。意識もはっきりしており、自分が作った料理ではない施設の料理を楽しむ毎日だそうです。「明日から包丁を置く」と宣言したことに「凄い!」と感心しました。同時に100歳まで自分で毎日食事をつくってこられた執念のような気迫を感じました。ふりかえってみると、私の妻も結婚して57年。毎日三度の食事づくりは大変だったことだろうと、今になって気が付きました。家庭の主婦の「毎日三度の食事づくり」をはじめ。家事労働の実態と意識を知りたいと思いました。
最大のストレスは、調理ではなく「献立きめ」と「マンネリ化」でした
インターネットで集めた「家事労働の実態や主婦の意識調査」に関する情報から、今回のテーマの「食事づくり」に関係する資料を整理してみました。その結果分かったことは、主婦の最大のストレスは食事の「献立決め」と「マンネリ化」でした。調理そのものよりそれ以前の「考えるプロセス」に強いストレスを感じているということです。「今日何をつくろう?」毎日メニューを考えること(献立づくりの固定化)が最大の苦痛になっているのです。JR東日本企画今どきファメリー研究所の「2025年度研究・イマドキ家族の食事に関する調査」では、平日の夕食の支度を負担に感じる共働き女性のうち、最も負担なのは「献立を考えること」で87%でした。「毎日三度の食事作りがどれほど大変か」は、世の中の多くの主婦‣主夫が日々感じている切実な悩みです。
確かに、私にも思い当たることがありました。ある日、妻が私に「何が食べたいの?何を用意すればいいかわからない」とつぶやいたことがあります。過去にはそんなことを一言も言ったことが無い妻の言葉に『ハッ」としたことがありました。こんな時「なんでもいいよ」という回答が、一番いけないことは何となく分かっていましたから、自分が一番好きな「ピッザ」とお願いしました。考えてみれば、結婚してから57年、毎日三度の食事を用意してくれたのです。特に、退職後は一日家にいますから、食事のメニューが余計に負担になっていると思います。私や家族は、「ありがたい」、「おいしい」と感謝はしますが、それがどんなに大変なことか分かっていませんでした。そこで、私が「時々食事をつくるよ」と提案すると、私が料理をすると「あの材料はどこ」「味はどう?」とうるさいし、材料をそこら中に散らかすのでその後始末が大変ということで、私の提案は、却下されています。
調査結果からも、多くの主婦が「家族には健康的でおいしいものを食べさせたい」という強い思いを持っており、責任感が強くなりやすい傾向があり、それが時にプエッシャーとなっているのです。そこで思い出されるのが、オランダに駐在していた時の日本とは真逆の話です。オランダの男性と結婚した日本人女性が、夫の健康を考えて、毎食違ったメニューの料理を出したら、その夫曰く「毎食変わった料理を出さないでほしい。何が出てくるか、心配しなければならないから」。一般的なオランダ人の家庭では、朝食、昼食、夕食のメニューは大体決まっています。
男性側も、もっと真剣に考えたい「主婦の家事労働」
主婦の仕事は、食事をつくるだけではありません。毎日、いくら時間があっても足りないほどの仕事があります。共稼ぎ夫婦なら、なおさら主婦に負担がかかってきます。主婦が不満を言わず、夫に強い要求もしないでいると、ついつい夫や家族は、それが当たり前のことになっているようです。また、夫がゴミ捨てなど家事の一部の作業を分担しているつもりで「ごみ捨てておいたよ」などという一声が「それだけのことを大げさに言わないで」という主婦にストレスを与えることになっています。私自身は、何もしてこなかったので偉そうなことは言えませんが、男性側はこの課題をもっと真剣に考える必要がありそうです。特に、退職後一日中家にいる男性は、考えてみませんか。まず、「手伝ってあげる」という意識は捨てて、主婦に邪魔にならないところから実践してみませんか。
参考資料;JR東日本企画の2025年調査、江崎グリコ株式会社の意識調査、リンナイ株式会社、株式会社mitoriz,共同通信PRワイヤー調査他

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