世界に育てられた45年~「忘れがたい人」との出会いと学び~Vol.12   ス・イン・ティンプ・ガン(Su Yin Timp-Gan )さん

出会い・学び

はじめに

今回紹介するス・インさんは、私がかって在籍していた日本の大手食品会社のオランダ法人が、1990年代初めに新規進出を果たした際、スタートアップメンバーとして加わった一人です。以前紹介した「XXXガールズ」と呼ばれたマリー・ポリんさん、ジャックリーンさん、ハネカさんなど、ウーマンパワーを象徴するメンバーの一人でした。ス・インさんは、2番目に採用された社員でした。以前紹介したティルさん(司馬遼太郎の街道を行く、オランダ紀行に出てくる通訳のティルさんです)の会社でインターンシップをしており、ティルさんから紹介されました。初めて会ったとき、小柄な体から溢れるエネルギーと行動力に満ちた印象が強く残っています。(アイキャッチ写真は、2019年の食事会:左からス・インさん、ジャックリーンさん、インゲボーグさん、ハネカさん)

1.【独特な訪問販売システム構築への挑戦

ス・インさんは、当社が日本と海外で採用している独特な販売システム(=訪問販売)をオランダでも導入しようという営業部に配属されました。日本語ができるということもあり、通訳もかねてこの営業部のチームリーダーをお願いしました。日本本社から派遣された営業のエキスパートから、訪問販売の理論と実践技術を一から徹底的に教育されました。そして彼女は、学んだことをメンバーに伝えるという役割も担いました。彼女がチームメンバーに、理論や実践技術を正確に伝えられるかどうかが成功のカギでした。大変重要な任務でしたので、彼女は疑問があれば納得するまでエキスパートに質問し、一つ一つ理解を深めていきました。そして彼女は、私たちの期待以上の成果を出してくれました。

この訪問販売方法は、オランダはもちろん、欧州の主要国にも存在していなかったために、ス・インさんをはじめ営業社員は全くの手探りだったと思います。それでも彼女は、持ち前のリーダーシップを発揮し、チームを力強く牽引(けんいん)しました。訪問販売は、消費者と直接コミニュケーションを取ることで、企業理念や商品価値を深く理解していただくことを目的としています。大変ユニークで強力な販売システムですが、オランダ市場で全面的に導入するには多くの課題があり、地域限定の導入を目指しました。それでも、この新しい当社独自の販売方法は、欧州においてユニークな販売システムモデルとして消費者やマーケティングの専門家から高く評価されました。この顧客との直接対話を目指した販売システムの狙いは、オランダでは「消費者センター」として発展していくことになります。

2.【ブランド構築への多大な貢献】

当時、ヨーロッパ市場には「機能性食品」という概念も商品もありませんでした。また、当時のオランダの消費者は、「現在の食生活のほかに新しい食品は必要ない」という意識が強かったと思います。そこで、商品の科学的な価値を消費者に直接伝える戦略を展開しました。そのうちのひとつが、「試飲活動」でした。試飲していただく際に、商品価値について説明し、消費者の質問に答えるという活動です。当時の試飲活動の目標は、人口の10%の人に試飲していただくことでした。スーパーの店頭や駅の広場に試飲コーナーを設けて試飲していただきました。この試飲活動でも、ス・インさんは、常に率先して行動しました。持ち前のバイタリティーと、いつも明るく笑顔を絶やさない人柄は、社内のチームワークづくりにも大きく貢献しました。この試飲活動の結果は、最初の一年間で人口の15%の人に試飲していただき、商品価値の浸透とブランド構築に成果を上げました。この試飲活動は、その後のベルギー、イギリス、ドイツでの販売政策として実施しました。まさに、オランダから欧州主要国へ進出する基礎を築くことになりました。

3.【スタートアップメンバー(OB&OG)のまとめ役

発売開始から数年が経つと、スタートアップメンバーは当社で修得した新しい知識と経験を携え、他社への転職や、独立して起業家への道へ進む人が出てきました。そんなメンバー達をこれまでまとめてきたのがス・インさんです。ここでも、彼女の持ち前の面倒見の良さとオーガナイズ能力が存分に発揮されました。スタートアップの仲間たちは、戦友のような深い絆で結ばれており、それぞれ違った道を歩むようになってからも、常に近況報告し合ったり、機会を見つけては集まって食事をしながら共に挑戦した当時を語り合っているようです。私がオランダを訪問した際は、必ずス・インさんが食事会をオーガナイズしてくれました。十数人が集まり、近況を語りあい、昔話にも花を咲かせます。あの時から30年以上たった今でも、この繋がりが続いていることに心から感謝しています。これもすべて、ス・インさんのお陰です。ありがとう。

2019年、ス・インさんの自宅でOB&OG会 ス・インさんは、二列目左から3人目です

4.【おわりに】

現在のス・インさんは、ヘルスケアのマーケティングの枠を超え、オランダにおけるデジタル変革(DX)やAI教育の推進者・起業家として活動しています。

  • Nationale AI-cursus(国家AIコース)
    • オランダ政府・教育機関・民間企業が共同で推進する国内最大級AI教育プロジェクトにおいてコミニュケーションマネージャー兼パートナー窓口を担当。複雑なAIの仕組みを一般の人々に分かりやすく伝える役割を担っています。
  • I.AMDIGITAL(自身のデジタルコンサルティング会社)
    • 官民ネットワークをつなぐオールラウンドな経営・マーケティングアドバイザーとして活動し、デジタル教育とコンサルティングの両面で存在感を高めています。

昨日届いたメールによれば、息子さんが大学を卒業され、11月から就職する前の時間を利用して、日本旅行を計画しているそうです。私たち世代の関係を超えて、息子さんたちに日本とのかかわりが繋がっていくことは、大変うれしいことです。

これから仕事が益々活躍忙しくなることでしょうが、これからも私たち仲間のまとめ役を、どうぞよろしくお願いします。

伊豆の山の中から、あなたの活躍をわくわくしながら応援しています。

5.【次回の予告】

次回は、やはりスタートアップメンバーの一人で、欧州本部のマーケティング部門で活躍したニック(Nick Nijman)さんを紹介します。楽しみにして待っていてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました